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​ARTIST

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​村山悟郎

1983年、東京生まれ。アーティスト。博士(美術)。東京芸術大学油画専攻/武蔵野美術大学油絵学科にて非常勤講師。東洋大学国際哲学研究センター客員研究員。自己組織的なプロセスやパターンを、絵画やドローイングをとおして表現している。

Sound scape of Ogi-Island with trumpet/2019/Sound 【式根島】

09:30-17:00, 9th, April, 2019.

 

recording: Yoichi Kamimura

trumpet: Syunsuke Nakamura

 

 男木島は、瀬戸内に浮かぶ小さな島だ。高松港から、鬼ヵ島伝説の残る女木島を経由して、フェリーで40分。距離感から言っても離島ではなく、二時間おきに往来するフェリーが都市との間にほどよい生活リズムをつくっている。人口は200人ほどだが、小学校もあり、瀬戸内国際芸術祭の舞台として活気を取り戻しながら、ゆるやかに発展をとげている。昭和から時が止まったような古い文化と、アートツーリズムがもたらした新しい文化、新旧異種の文化摩擦をアートは媒介することが出来るのか、挑戦はつづいている。

 男木島の地形は小山型で、山の中腹にある豊玉姫神社を中心に、斜面を下りつつ迷路のように入り組んだ集落を形成している。中心に宗教施設を据えた集落というのは、どこかヨーロッパの古い町を彷彿とさせる。このようなレイアウトのなかでコミュニティを形成するのは、教会の鐘のように、音-サウンドスケープである。男木島には、音の届く空間的距離と島社会が密接に結びついたサウンドスケープがある。

 神社の鐘や公共の防災無線、二時間毎に鳴るフェリーの汽笛、島民の生活音とざわめく観光客鳶や燕や鶯の美しい鳴き声に、遠くに走るタンカーの重低音と波音のドローンが重なる。豊かな自然と島社会を男木島のサウンドスケープは体現していると言えるだろう。

 この作品は、男木島のフィールドレコーディングの記録である。船着き場にマイクをおき、島の地形を立体的に感じ取るために、このサウンドスケープに一つの介入を加えた。神社の丘にトランぺッターを配し、汽笛と鳶の二つの音にそのつどレスポンスする。さて、男木島にどのような音景がひろがっているかは、あなた自身の耳で確かめてもらいたい。

CAKE DE MARIKO -Poiesis of a homemaker ケーキ・ド・マリコ -主婦の制作/2016 | 2019/Video Installation 【東久留米】

 「ケーキ・ド・マリコ」とは、かつて滝山団地内に存在した手作りケーキの店である。2015年まで25年つづいたその店は、かなり特異な形で営まれた。家族と地域を活性する、いわば「主婦の制作」と呼ぶべき創造行為、そのドキュメントを私は一つの芸術として、あるいは均質な郊外へとすすむ東久留米の批評として発表する。

2016年に他界したケーキ・ド・マリコ店主・村山眞理子は、私の母である。店を滝山団地の自宅で始めたのが1990年5月28日、それからケーキを作りつづけ、少しずつ営業を拡充していった。主婦が団地内で営むケーキとランチの美味しいお店という触れ込みで、口コミやwebを中心に評判が広がり、ときにはテレビ取材を受けることもあったほどだ。できたてホームメイドの暖かみのある味だけでなく、店主の明るい人柄もあいまって、ケーキドマリコは地域のなかに根付いた存在であった。

 また、店主は多くの記録や資料を遺しており、写真、ホームビデオ、日記、お知らせのビラ、そして料理や菓子のレシピなど、その種類は多岐に渡っている。私は、これら膨大な記録をまとめることで、主婦の制作が持つクリエイティビティと、団地という均質な住環境を豪快に突破する生き様を感じてもらいたいと考えた。そこで、ケーキドマリコという活動と、その生活とに焦点をあて、映像を編集構成する。

 ホームビデオといった、極めてプライヴェートな記録を公開する上で、私は二つのテーマを設定する。それは「公私混交」と「ケーキによる家族づくり」だ。店主は、自分と家族が住む家の一室に、お客様を招いてケーキを売り、料理をふるまってきた。毎月顧客に配っていたビラ『ケーキドマリコからのお知らせ』にも頻繁に家族の話題が登場している。そこには店を営業する上でのいわゆる公私の切り分けは無く、村山眞理子独特の公私を混交した社会との向き合い方があったと言える。他方、店主がライフスタイルとして選び取った「ケーキ」というモチーフは、仕事と家庭の両立という現代社会の人々の命題を実現しながら、家族をつくりあげてゆく働きがあったと言えるだろう。手作りのケーキは、それを食べることによって作った人との信頼関係を深める。また、ケーキを切り分けるという行為は、そのメンバーで価値を分有するという社会性を育む。そして、同じ味のケーキを食べることによって、感覚の共感性を増すのだ。元々ものづくりに長けた店主が、家族の自治創造という問いから辿り着いた一つの答えがケーキだったのだろう。それは主婦の制作の一つの形であり、いかなる環境であろうと自治によって地域を創造するという鋭い郊外批評なのである。

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